報 告 |
|
第5回大分緩和ケアの夕べ
場 所 : アステム本社4F 大会議室
参加人数 : 158名
医師 16名、看護師 110名、薬剤師 17名、その他 15名
今回は翌日が休日であり、天候が悪く、参加者は158名であった。大分市が中心であるが、佐伯や中津から、遠くは大牟田市(福岡県)からも3名の参加と多くの医療者が集まり、熱心な質疑応答も行われた。癌終末期の症状コントロールについて、種々の病態別に、その治療、ケアなど幅広い講義内容であった。日頃、症状コントロールで困っているであろう事について、実践に即した講義であり、講義後活発な質疑応答があった(文責:山岡憲夫)。
【 講演内容 】
癌終末期の症状コントロールのコツ
演者: 一万田 正彦(大分ゆふみ病院 ホスピス長)
T)嘔気嘔吐
U)便秘
V)モルヒネってまだ使えるの
W)オピオイドを増やしてもなかなか効かない
X)不眠、眠剤の選択
Y)全身倦怠感と食欲不振
Z)鎮静
[)精神的混乱
T) 嘔気嘔吐
1)嘔気嘔吐(薬剤性)
症例 : オキシコンチン20mg/日から、痛みが増強し40mg/日に増量し、痛みは治まったが吐き気が続く
(治療)
@ ノバミン、セレネースの投与
A オピオイドローテーションを考える
デュロテップは他のオピオイドに比べて、比較的吐き気が少ない。
2) 嘔気嘔吐(消化管閉塞)
症例 : これまでカディアン60mg/日にてコントロールしていたが、イレウスのため嘔吐するようになったが、イレウスのため吐き、内服困難
問題点:@オピオイドの投与方法をどう変える
Aモルヒネは便秘になりやすく、避けた方が良いのか
(対応):@モルヒネの持続静注、皮下注:やや少なめから開始
A吐くが続くけば、サンドスタチンやブスコパンを導入
* サンドスタチン
作用:胃、十二指腸、小腸からの消化液の分泌抑制、水、電解質の吸収促進
投与量:初回300μg/日の持続投与で効果出現、2-5日で評価
ポイント:特に下部消化管閉塞に有用性は高い
3) 嘔気嘔吐(体動時)
症例 : オキシコンチンの投与と関係なく、起きると突然吐き気あり
問題点:オピオイドが原因か、ノバミンやセレネース以外の投与
* トラベルミン
適応症:内服:乗り物酔い、注射剤、メニエール症候群による吐き気、
ポイント:前庭神経の異常に関わらず、体動時に吐き気、嘔吐が見られる場合は、本剤が有効である。
□□ 制吐剤の選択 □□
原因と治療
@ 延髄化学受容引金帯の刺激(オピオイド)→ノバミン、セレネース
A 消化管の機械的・化学刺激(胃内容停滞、イレウス)
→ 動かす場合:プリンペラン、ナウゼリン、下剤
→ 動かさない場合:ハイスコ、ブスコパン、サンドスタチン
B 前庭器官の刺激(体位変換に伴う嘔吐)→トラベルミン
C 大脳皮質の刺激(脳圧亢進)→ステロイド、鎮静剤
U) 便秘
症例: オピオイド開始により便秘、腹満感出現した場合
対応: @オピオイド使用中の便秘はオピオイド投与中は続き、慣れることがない
Aモルヒネ、オキシコンチンには高頻度であるが、デュロテップは比較的少ない
(オピオイドローテーション)
B当院では、ラクツロース10ml+水10mlでシャベットにして下剤として使用
V) モルヒネってまだ使えるの
ポイント:
@ モルヒネは、除痛以外にも、多幸感や呼吸困難緩和作用など、他のオピオイドよる優れた効果ある。
A 余命が短く、痛みだけでなく、倦怠感や呼吸困難が出現してとき有効
デュロテップパッチで症状コントロールが困難な場合、等量のモルヒネ持続皮下注が有効なことがある
W) オピオイドを増やしてもなかなか効かない
症例: 手の痺れ痛みに対して、オキシコンチン増量しても、痺れ痛みが残る
注意点: ちゅんとオキシコンチンは吸収されているか、神経因性疼痛に何が有効か
ポイント: 鎮痛補助薬の導入時期
オピオイド増量やNSAIDs使用しても鎮痛効果がない場合。痛みがあるが副作用だオピオイドが増量できない場合
鎮痛補助薬の選択
@ トリプタノール:10-50mg/日:しびれや締め付けられるような痛み
A リボトリー-ル:0.5-2mg/日:電気が走るような痛み、鋭い痛み
B キシロカイン:200-1200mg/日:明らかな神経障害性疼痛に有効
C ケタラール:50-300mg/日:骨転移や体動時痛や他の薬が有効でないとき
注意点:いずれも眠気がある。@Aは効果判定に数日要する。
* ケタラールシロップ:
作り方: 筋肉用ケタラール1mlにカキ氷用みぞれシロップ4mlを加えて:1ml=10mgとする
使用法: 1回量25mg、1-3回/日から開始、300mg/日が上限
保存: 10日間
副作用: 眠気、精神症状
これでも効かないとき:神経ブロック
□□ 癌性疼痛に対する持続硬膜外ブロック □□
@ 硬膜外ブロック:モルヒネ注の1/10以下、内服1/20から1/40極めて少なく量で良い
A PCAポンプ:詳細設定できる
B 禁忌:脊椎破壊の存在、出血傾向、易感染性
X) 不眠、眠剤の選択
1)眠剤の選択
一段階:デパス1-2T
二段階:レンドルミン(中間作用型)1-2Tか、マイスリー(短時間型)1-2T
三段階:ロヒプノール(長時間作用型)
四段階:トリプタノール、テチラミドの併用、さらに、ベゲタミンB,ヒルナミンの併用
2)加投与:あまり効果が強くない薬剤(ワイパックス、デパス、マイスリーなど)
内服では、入眠までに最適40分かかる。
3) 内服困難な場合
@ ドルミカム1-2A+生食100ml
A ロヒプノール1-2A+生食100ml
B コントミン(10mg)1-2A追加する。
C アナフラニール1A+生食250mlやフェノバール1A筋注
その他: セニラン座薬もある。
Y) 全身倦怠感と食欲不振
薬物療法
@ ステロイド:リンデロン(0.5)2Tより開始、その後増量、4mgまでげ限界
A リタリン:眠気改善より倦怠感を和らげる1-2T/日
Z) 鎮静
*注射による鎮静方法
@ ドルミカム2A+ハイスコ1A+生食3ml(合計8ml):0.15ml/hより、持続静注、持続皮下注
鎮静が見られるまで15分毎に、1時間分の早送りをする。
A 効果ない場合:ロヒプノ-ル、コントミン、フェノバールへの変更、併用する
* 沈静に入る前の確認:それ以外に方法がないのか、患者や家族が希望しているのか、
医療スタッフ間での評価が出来ているのか
*段階的鎮静
一段階: 夜間のみの鎮静
二段階: 日中もいくらか残る程度
三段階: 1日中鎮静
[) 精神的混乱
がん終末期
* 原因:衰弱、脳転移、環境の変化、薬剤性、不安やうつ状態、電解質異常
* 臨床像:失見当識、集中力低下、誤認、幻覚、不穏、攻撃的な振る舞い、自律神経過緊張(顔面紅潮、発汗、頻脈など)
* 治療薬:抗鬱剤、抗精神病薬など
=質疑応答=
質問1(外科医):硬膜外麻酔の期間やその頻度、効果は?
応答: 通常は2週間ぐらいであるが、感染がなければ、そのまましている。当院ではその使用は少なく、年間2-3例か・
質問2(内科医):患者さんの余命をようにしてみているのか?
応答: 患者さんのいろんな状況を見て、全体的に見て判断している。血液検査も参考にしています。
質問3(理学療養士):体力が低下している癌終末期患者さんで理学的はことはどこまでできるのか
応答:悪疫質となり、体力も低下しており、機能改善へ結び付くことは難しいが、リハビリをすることで、生きる意欲がまします。
質問4(外科医):鎮静について、医療者間での倫理的面も含めて検討はどのようにしているのか。
応答:患者と家族と、主治医と看護師間で、検討しています。
質問5(座長):鎮痛補助薬の使い方が難しいのですが、どうしていますか
応答:患者さんの話しをまずは良く聞いて、どのような痛みなのかを判断して、それに会った薬:リボトリールのような補助薬をだしています。副作用も気をつける必要があります。
(以上、文責:山岡憲夫)
|
|
|
|
|
|
|
|
|