報 告 |
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第2回大分緩和ケアの夕べ
場 所 : アステム本社4F 大会議室
参加人数 : 194名
医師 16名、看護師 140名、薬剤師 15名、その他 23名
アステム大分本店4階にて、第2回目の大分緩和ケアの夕べが開かれた。内容が終末期がん患者の在宅へ向けての働きかけと、その実状や、行政を巻き込んだ山口市の取り組みであった。家で最後を迎えたい患者や家族が多くいるのも現状であるが、それができない現実もある。がん患者の在宅への関心が高いことも反映してか、194名もの多数の医療者が集まり、熱心な講演会であった。
【 講演の要約 】
在宅緩和ケアの実践と課題
−山口市の取り組みと訪問看護師の役割−
演者: 岡崎美智子 (山口市在宅緩和ケア支援センター)
□ 講演要旨
T).山口赤十字訪問看護ステーションの現況
(山口市のホスピス・緩和ケアの現状と取り組み)
U).山口市の現況
V).山口市在宅緩和ケア推進事業
W).山口市在宅緩和ケア支援センター
X).結果
Y).今後の課題
T).山口赤十字訪問看護ステーションの現況
このステーションが取り扱った平成17年度はがんによる死亡は65名で、うち在宅死が41名と、約2/3は在宅で、看取っており、極めて高い在宅死率であった。
在宅における訪問看護師の役割を以下のように説明している。
1.疼痛コントロールをはじめとする医療処置ができる能力
2.清潔、排泄、食事などの生活支援能力
3.危機的状況にある家族を支援する家族ケア能力
4.死にゆく人と家族の思いに寄り添えるコミュニケーション能力
5.チームケアを推進するコーディネーション能力
U).山口市の現況
山口市の年間の悪性腫瘍による死亡が310名程度であり、このうち山口赤十字病院での死亡が160名前後と過半数以上であり、偏りがある。山口赤十字訪問看護ステーションで取り扱った在宅死は平成14年、15年、16年、17年と15名、25名、27名、41名と増加している。山口市で平成17年度がん在宅死の61名中41名と2/3は山口赤十字訪問看護ステーションで取り扱ったおり、山口市の中心的役割であった
*在宅緩和ケアにおける問題点
がん患者は
1.各種制度の活用がしにくい
2.各種制度が活用できても短期間である
3.年齢的に既存のサービスが殆ど該当しない
4.在宅における医療の提供が不十分 などの問題点があり、山口市では平成15年度から独自の活動を開始した。それが山口市在宅緩和ケア推進事業である。
V).山口市在宅緩和ケア推進事業
【事業内容】
1、山口市在宅緩和ケア推進会議の開催
・事業の検討 ・実態及びニーズ調査
*山口・吉南地区地域ケア連絡会議へ委託
2、在宅緩和ケア福祉サービスの提供
・訪問介護 ・短期入所介護 ・訪問入浴サービス
・福祉用具のレンタル・・・吸引器、吸入器、点滴スタンド
3、保健・医療・福祉サービスの連携システムの構築
4、在宅緩和ケア相談体制の整備
・在宅緩和ケア支援センターの設置
・福祉綜合相談窓口の設置
・各医療機関の相談窓口の明確化
・在宅緩和ケア相談の手引き作成
5、市民への普及啓発・情報提供
・研修会の開催
・PR用パンフレット、ポスター作成
6、在宅緩和ケア従事者研修会の開催
・山口市在宅緩和ケア支援センターを中心とした研修体制
【サービスの利用対象者】
山口市在住のがん末期の方で在宅生活への支援及び介護が必要な方
年齢制限なし・他法優先(福祉機器の貸与の一部を除く)
W).山口市在宅緩和ケア支援センター
がんに罹られた方が、医療、福祉の総合的なケアを受けながら、住み慣れた地域で家族と共に安心して有意義な生活が送れるように相談、支援を行なう。また、在宅緩和ケアに取り組む専門職種への相談、支援も共に行なう
【業務内容】
1、患者家族に対する相談支援
<来所、電話、訪問による相談>
必要に応じて医師、薬剤師、看護師、医療ソーシャルワーカー、栄養士等の専門職種が対応
<医療・福祉に係るサービスの調整>
<山口市在宅緩和ケア福祉サービス等に係る申請代行>
2、医療機関及び訪問看護ステーション等従事者に対する相談支援
・患者・家族と同等の相談体制
3、医師・看護師・福祉関係者等への専門研修会
<臨床実習・訪問実習>・・2005年1月より開始
@ 医師 ・・・木曜日午後1〜2名
A 看護師 ・・・週3・5日のいずれか
B ホームヘルパー ・・・週3・5日のいずれか
<事例検討会>
・日時:奇数月第3水曜日 19:00
4、緩和ケアに係る情報提供
専門職種を対象にした、情報誌等による情報提供
5、一般市民への普及啓発
市民公開講座
情報誌 等
*3・5については、医師会及び山口市と共催にて実施
X)。結 果
1.山口市在宅緩和ケア支援福祉サービスの利用により、在宅で過ごせる患者が増加した。
2.研修により、施設スタッフと在宅スタッフが、声が聞ける関係、顔がわかる関係になり、それぞれの役割認識ができている。
3.市民、保健・医療・福祉関係者等が、研修を通していのちについて考える機会となり、自分自身の人生観、死生観への影響がみられている。
Y).今後の課題
1.要支援・要介護1のがん終末期患者のサービス(ベッド・車椅子)の充実。
2.研修の活用による、施設スタッフと在宅スタッフの連携の強化。
3.チーム医療システムの確立と在宅緩和ケアの普及啓発の促進。
【 講演を聴いて 】
以上、とても詳しい内容であった。この山口市在宅緩和ケア支援センターが、山口市のがん在宅死の2/3を取り扱い、その在宅死率が山口市でがん死全体の20%を越すという極めて高い在宅死の割合であった。日本の平均のがん在宅死が約6%であるのを比べれば、その在宅緩和ケアが進んでいるのが分かる。在宅で最後を迎えたいひとは多くいるのにも関わらず、ハード面の不足により、その患者の思いを遂げれない現状があり、大分県でも早急な普及が望まれる。
最後に講師の岡藤さんが寄り添いとは“その人がその人でいること”ができるように支援することと“話を行い、感銘を受けた。大分県でも在宅が今後もますます発展する事を願うが、山口市のように行政との提携もとても大切と思われた。
(文責:山岡憲夫)
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