報 告

 第10回大分緩和ケアの夕べ

日   時  : 平成19年5月16日(水)
場   所  : 全日空オアシスタワー 5F 孔雀の間
参加人数 : 229名 
         医師22名、看護師167名、薬剤師18名、その他22名


 今回は、第10回記念大会ということで、全日空ホテルオアシスタワーにて、神戸の六甲病院緩和ケア医長の安保博文先生に遠方から来て頂いた。229名と多くの医療者が集まった。
内容が、疼痛コントロールを始め、緩和ケアの全般の知識を詳しく、分かり易く講演していただき、また、スライドでなく、詳細な(12ページに及ぶ)レジ面を用意していただき、そのレジメンに沿って、講義があった。このため、極めて分かり易く、多くの医療者から好評であった。(文責:山岡憲夫)。


 【 講演内容 】


最新のがん終末期の緩和ケア
〜その目標と方法、常識とコツ〜
演者: 安保 博文氏(国家公務員共済組合連合会六甲病院 緩和ケア科 医長)



 【 講演要旨 】

T.緩和ケアの基本的な考え方

内容
1.緩和医療の目標と方法
<何ががん患者を苦しめるのかを考える>
@がんによる身体症状:痛み・息苦しさ・浮腫など
A病気に対する不安:知らないことに対する恐怖感
B薬の副作用: Any drug can do anything!
C人間関係の悪化:家族との溝など
Dスピリチュアルペイン:死をめぐる悩みなど
E看護師の副作用、医者の副作用、病院の副作用
 これらの影響により普通の生活ができなくなることが大きな苦痛となる。
 目標は少しでも普通に近い生活を送ることである。

2.患者さんへのアプローチ方法
1)患者さんのストーリーを理解する:病気をめぐる物語
病気に伴う症状が患者さんの生活全体に対しどのように影響を与えているか、患者さんにとって今回の病気や今の症状がどういう意味を持つのかを聞き取り共感する。
2)身体状況を医学的に把握する:科学的アプローチ
現在の症状の原因が何かを医学的に判断する。
症状の原因は主として3つ。
@癌病変の進行・転移 
A薬剤(緩和医療の薬、抗がん剤)の副作用 
B合併症(感染症、せん妄、高カルシウム血症、腎後性腎不全など)
3)患者さんの物語にあわせて見立てを説明する:新しい物語
4)実現可能な目標を設定する:希望の提示
病気の進行に伴って医学的な目標を断念し続けてきた患者さんに、もう一度達成可能な医学的目標を提示し希望を作り出す。
@夜眠れること
A安静にしていれば苦痛がないこと
B体を動かしても苦痛がないこと
 ☆無理な目標を立てると、薬の副作用による体調悪化や、不安・不満・絶望をもたらす。
5)まず、治療可能な病態があればしっかりした医学的対策を検討する:基本的治療
感染症の治療、高カルシウム血症の対策、薬の減量による副作用対策、せん妄の原因治療
6)残った症状に対し、症状コントロールのための治療を行う:対症療法
鎮痛剤、ステロイド、睡眠剤、抗精神病薬など
7)病状の進行に合わせて、本人・家族とともに目標の変更と治療の変更を行う

U.痛みのコントロール

1.痛みのコントロールの目標と方法
 痛みや他の身体症状をとることは、ターミナルケアの必須条件である。まず痛みをとらなければ、精神的ケアもホスピスケアも始まらない。
1)痛みの治療目標を必ず設定する
第1目標:痛みに妨げられず夜眠れること
第2目標:安静時の痛みの消失
第3目標:体動時の痛みの消失(必ずしも達成されない)
患者に痛みの原因と対策を説明し、痛みの治療の目標を明らかにする。目標を設定し、それが達成されることで安心感が生まれる。目標なしに生きていくのはむずかしい。
2)鎮痛薬の使い方:薬は副作用というリスクを必ず伴うことに注意!
<鎮痛薬使用のWHO五原則>
@可能な限り経口投与とする(by mouth)
A時刻を決めて規則正しく使用する(by the clock)
B痛みの強さに応じた薬剤を選択する(by the ladder)
C患者ごとに個別な量を決める(for the individual)
Dその上で細かな配慮を(attention to detail)
WHOが提唱するのは、地球上のどこでも生活しながらがんの痛みを和らげるための方法である。しかし、入院しなければならないほど体調が悪化した場合にはこの5原則にこだわりすぎないことも大切である。
<WHO五原則の裏返し五原則>
@by mouthにこだわらない
薬を内服することが苦痛になれば(嚥下できなくなればではなく)、早めに注射(オピオイドの持続皮下注、ロピオンの静注など)に切り替える。
Aby the clockにこだわらない
内服時間にこだわりすぎると生活に支障をきたす。体調がひどく悪いのに同じペースの定期投与をつづけると生命に危機を及ぼす。
Bby the ladderにこだわらない
モルヒネよりNSAIDSの方がよくきく痛みがある。
Cindividualの変化に注意
同じ患者でも時期と体調や誰が関わるかによって鎮痛剤の必要な量と副作用は異なる。
DGod is in the details
細かな点にこそ生活の喜びや苦しみがある。鎮痛療法の中でdetailのことが生活のなかでは重要なことだったりする。生活と医療のレベル差の問題を意識すること。

<鎮痛薬併用療法>
 WHOの三段階ラダーは、痛みが強ければNSAIDsに固執せずオピオイドを使いましょう、ということを主張するものである。
 ただ、残念ながら強いオピオイドが強い痛みを必ず緩和するわけではなく、また多量のオピオイドは多くの副作用をもたらし、かえって患者の生活に障害をもたらすことも多い。
 三段階ラダーにとらわれすぎることなく、痛みの原因と他の症状に応じて鎮痛薬を選択・併用することが重要である。
☆強オピオイドであるモルヒネは最も強い鎮痛薬として位置付けられるが、持続的な炎症や神経刺激があると中枢神経の過敏化がおこり、モルヒネに対する感受性が低下する。このため、骨・軟部組織の痛みや神経障害による痛みではNSAIDsや補助薬の併用が必要となる。
☆浮腫や出血(血痰や血尿など)のためにNSAIDsが使いづらいときは弱い痛みでもオピオイドを用いた方が良い。


☆六甲病院緩和ケア病棟の鎮痛剤の基本処方
第1段階 オステラックR2錠(orロピオンR静注)+タケプロンR1Cap(orガスターR2錠)
第2段階 トラマドール50mg/日分4+ラキソベロンR (±第1段階の薬剤)
※トラマドールは抗うつ剤様の鎮痛補助作用も有する。1日400mgまで適宜増量。
※腎機能低下・浮腫・腹水や何らかの出血がある場合、NSAIDsは併用しない。
第3段階 塩酸モルヒネ(orオキシコンチンR)+ノバミンR4錠分4+ラキソベロンR
またはデュロテップR貼用  (±第1段階の薬剤)
※内服困難な場合や、デュロテップ増量によっても鎮痛効果が不十分な場合はモルヒネ持続皮下注入を行う。
どの段階でも、神経障害性疼痛の残存が疑われる場合は鎮痛補助薬(リンデロンR・アモキサンR・ケタラールRなど)の併用も検討する。


2.非オピオイドの使い方:アセトアミノフェンとNSAIDs
 非オピオイドに属する薬剤は、消炎作用のないアセトアミノフェンと各種の非ステロイド性抗炎症薬=NSAIDs(Non Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)である。
1)アセトアミノフェン(カロナールR、アンヒバR、アルピニーRなど)
2)NSAIDs(Non Steroidal Anti-Inflammatory Drugs;非ステロイド性抗炎症薬)
<NSAIDsの副作用>
 NSAIDsは大変副作用が多い薬であるにもかかわらず、消化器障害以外はあまり強く認識されていない。特に、体液貯留作用による浮腫・腹水増悪と血小板凝集阻害による出血に要注意!
 副作用が疑われたり予後が1週間以内と予測された場合は減量または中止すること。
 (1)胃腸障害:胸焼け、食欲不振、胃十二指腸潰瘍、小腸潰瘍、直腸潰瘍、消化管穿孔
 (2)血小板凝集阻害:血尿、病変部位からの出血など出血傾向
☆対策 NSAIDを中止するか、選択的COX-2阻害薬に変更する。
 (3)体液貯留:下肢浮腫、胸腹水の増加
 (4)腎不全:特に血管内脱水(下痢嘔吐や出血、利尿剤)があるとき起こりやすい
☆対策 NSAIDを中止し、輸液を行う。

<NSAIDsの選択>
オステラック・ハイペン (エトドラク)
1日2錠(400mg)分2。COX-2選択阻害剤であり、胃腸障害が少ない。
モービック(メロキシカム)
半減期が27.6時間と長い。COX-2選択阻害剤で胃腸の副作用は少ない。解熱作用は弱い。
ロピオン注(フルルビプロフェンアキセチル)
日本で使える唯一の静注NSAID。効果は15−30分で現れ、3−12時間つづく。静注時にけいれんの報告があるため、1Aを1分以上かけてゆっくり静注すること。
当科ではロピオン1Aを生食20mlで希釈し、1日2回静注で用いている。全身状態があまりよくない場合は1/2Aを1日2回静注で用いるのが安全である。
ボルタレン(ジクロフェナク)
1日75mg-150mg。海外でも同じ量で用いられる。日本人では胃腸障害を生じやすい印象。坐薬が使えるので便利だが、内服できないくらい体調が悪化しても投与続行されてしまうため副作用が多くなる。当科でも直腸出血での死亡例がある。(坐薬は12.5mg、25mg、50mgの3種類)
ロキソニン(ロキソプロフェン)
1日3錠。日本で一番売れている鎮痛剤。鎮痛効果が強いわりに胃腸障害が少ないとされる。
ナイキサン(ナプロキセン)
1日3−6錠(300-600mg)。海外では1日500−1000mgで使用されている。半減期が長く腫瘍熱に使いやすいが、肝障害のときは副作用が多くなる印象がある。


3.弱オピオイドの使い方:コデインとトラマドール
トラマール(トラマドール)
 現在日本では注射薬のみ認可されており、当科では注射剤を内服で使用している。1回12.5mg×4回/日で開始。1回100mgまで増量可能。内服では、トラマドール12.5mg=モルヒネ2.5mgの鎮痛効果である。約30分で効果が現れ、4−6時間持続する。モルヒネ受容体を介する鎮痛効果に加え、抗うつ剤と同じ機序による鎮痛効果も有するため、同等量のモルヒネより神経因性疼痛に効果がある。1A(100mg)=約100円。
 モルヒネに比べ、吐き気や便秘の副作用が少ない。モルヒネと同じく味が苦いため、内服水溶液作成の際にはシロップを加える。(例:トラマールR12.5mg+単シロップ0.5ml+水9ml)


4.強オピオイドの使い方
1)モルヒネ
<モルヒネの投与方法>
第1段階 塩酸モルヒネ10mg分4で開始
1回2.5mgを1日4回内服する。臥床・睡眠中でも痛む人や朝に痛みが強い人では、眠前の投与量を2倍にする。先にトラマールを使っていたら、その1/5のmg数のモルヒネで開始する。 レスキュードーズ(疼痛時頓用)は、1日の1/4〜1/10を内服する。
第2段階 痛みが残るなら、モルヒネを3-5割ずつ増量する。
眠気などの副作用がひどくならない範囲で痛みがとれるまで増量していく。20mg以上になればMSコンチンやカディアンに変更可能。
第3段階 内服が困難になればモルヒネを持続皮下注射で用いる。
モルヒネを60mg/日内服していた人なら、その半量のモルヒネ30mg/日(=3.0ml/日)を持続皮下注で使う。このとき、せん妄や吐き気が出現する可能性があれば、モルヒネにセレネースを混ぜて併用する。(例;塩酸モルヒネ50mg+セレネース5mg) レスキューは、一日の1/6-1/24量を早送りして使う。

<モルヒネの使用量>
 70%の患者では1日量120mg以下で痛みがコントロールされるが、時には1000mg以上の大量のモルヒネを必要とすることがある。モルヒネの最適量は「耐えられない副作用なしに、痛みを除去するために必要な量」であり、投与量の上限はない。適正使用量の差が人によって100倍(10〜1000mg)にもなる薬剤はめずらしいが、その原因は明らかでない。

<モルヒネが効く痛みと効きにくい痛み>
(1) モルヒネによく反応する痛み
・肝臓腫大などの内臓痛、皮下などの軟部組織浸潤
(2) モルヒネにある程度反応する痛み
・炎症を伴う軟部組織や骨転移の痛み:NSAIDを併用。
・末梢神経圧迫による痛み:ステロイドを併用。
・腕神経叢(パンコースト腫瘍)や骨盤神経叢の癌浸潤(直腸癌の骨盤内再発)による痛み:NSAID、ステロイドと抗けいれん薬などの鎮痛補助薬の併用が必要なことが多い。
・脊髄圧迫や頭蓋内圧亢進による痛み:高用量のステロイドや、他の鎮痛補助薬が必要。
(3) モルヒネが効かない痛み
・筋肉の痙攣、攣縮による痛みにはモルヒネは全く効果がない。セルシン・テルネリンなどの痙性麻痺用薬を用いる。

<モルヒネの副作用>
(1) 便秘:腸の分泌と蠕動運動を抑制するため、ほぼ全例(95%)に発症する。
(2) 嘔気嘔吐:嘔吐中枢の刺激や胃の運動抑制によって起こる。
(3) 眠気:投与初期に起こりやすい。3−4日で消失することが多いが過剰投与の指標でもある。
(4) 混乱・せん妄:モルヒネ単独で起こることは少ないが、末期では生じやすい症状である。
(5) 呼吸抑制:腎機能悪化や全身状態の悪化にもかかわらず投与量を減量しないときや、注射で鎮痛に必要な量以上に投与されたときにおこりやすい。
(6) 排尿障害・尿閉:男性に多い。
(7) ミオクローヌス:ウトウトしているときに現れやすい大きなふるえのような不随意運動で、家族やナースが“けいれん”と報告することが多い。モルヒネの代謝物であるモルヒネ-3-グルクロナイドの蓄積ともいわれている。
(8) 発汗:患者はあまり不快に感じないことも多いが、リタリンを併用すると増悪するので注意。

2)フェンタニル
モルヒネと同じく強い作用のオピオイドに分類され、μオピオイド受容体に作動する。
注射薬はフェンタニル、貼付剤はデュロテップパッチである。
<フェンタニルの副作用対策>
 モルヒネと同じく、眠気・便秘・嘔気が主な副作用であり、その他前記のモルヒネと同じ副作用がみられる。モルヒネからフェンタニルまたはデュロテップに変更した場合、緩下剤はいったん半分量にし、そのあと適宜調整する。

3)オキシコドン
 オキシコドンは、強い作用のオピオイドに分類される。モルヒネ・フェンタニルとは異なりκオピオイド受容体に作動して効果を発揮するが、副作用はほぼモルヒネと同等である。
 今日本でつかえる内服薬は徐放性製剤のオキシコンチンのみであり、海外で販売されている即効性の内服薬はまだ利用できない。注射薬としてパビナール注(塩酸オキシコドン8mgと塩酸ヒドロコタルニン2mgを含有)が利用できる。
<オキシコドン製剤の使い方>
オキシコンチン
 オキシコンチンRは、小腸内でオキシコドンが徐々に放出されて効果が12時間持続するように工夫されたオキシコドン徐放剤である。モルヒネの徐放剤であるMSコンチンRは吸収開始まで1時間以上、鎮痛効果が見られるまで2時間以上かかる難点があるが、オキシコンチンRは吸収開始までの時間が10-15分程度と早く、1時間後には鎮痛効果が現れるため、NSAIDで効果が不十分な場合にオピオイドの開始薬として用いることもできる。ただし、痛み増悪時の臨時追加投与(レスキュー)は30分で鎮痛効果が現れる即効性のモルヒネ製剤を用いるべきである。

4)ブプレノルフィン
レペタン坐薬 
 NSAIDsで痛みがコントロール困難で、モルヒネが使いにくい場合に使用される。1回0.1mg(0.2mg製剤の半分)を1日2−3回で開始し、適宜増量する。
レペタン
 レペタンR坐薬が使用しづらい場合にはレペタンR注を持続皮下注入で使用する。開始量は0.2−0.4mg/日で、鎮痛効果をみながら増減する。持続皮下注入が施行しづらい場合には、レペタンR注を舌下投与や内服で用いることも試みられている。
 
<オピオイドローテーション>
 オピオイドローテーションとは「オピオイドによる鎮痛効果と有害作用とのバランスの維持が困難な時、使用中のオピオイドを他のオピオイドに変更することによってそのバランスを回復すること」をいう。
<オピオイドローテーションの適応>
1.あるオピオイドを使用し疼痛のコントロールはついているものの、治療困難な副作用が出現して、それ以上そのオピオイドを続行することが出来ない場合。
2.疼痛も副作用もコントロールできない場合。
3.そのオピオイドをいくら増量しても疼痛コントロールがつかない場合。
4.オピオイドの反復・長期使用によって発現した耐性を回復したい場合。
5.患者の状態により投与経路の変更が必要になった場合。
6.医療経済的な問題が発生した場合。


5.鎮痛補助薬の使い方
<神経因性疼痛の特徴>
下記のいずれかの性質が見られる。
 a.痛む場所にあきらかな組織損傷がない。
 b.灼けるよう、ひりひりする、しびれを伴うなどと表現され、持続的、ときに電撃的な痛みである。
 c.疼痛部位に一致して知覚障害を認めることがある。
 d.普通では痛みを起こさないような刺激(軽く触れるなど)によって痛みが発現する。
 e.モルヒネを120mg/日以上内服しても効果が十分得られない。
 f.キシロカイン100mgを15−30分で点滴することで痛みが和らぐ。
神経因性疼痛に対してはステロイド・抗けいれん薬・抗うつ薬・ケタミンなどの鎮痛補助薬を用いて治療する。
<神経障害性疼痛に対する薬物療法マニュアル>
1.オピオイドをできるだけ増量する。
2.十分量のNSAID(ロピオンR1A×2回/日など)を3−5日間オピオイドに併用する。
3.リンデロンR8mg/日を3−5日間投与して効果をみる。効果があればできるだけ減量して維持する。
4.抗うつ剤アモキサンR25mg〜50mg/日を5日間投与して効果をみる。効果があれば、十分な効果が得られるまで増量する。(最大量150mg/日)
5.抗けいれん剤ガバペンRを初日眠前300mg、2日目300mg×2回、3日目300mg×3回内服し、同量で2−3日鎮痛効果と副作用を見る。効果があるようなら、十分な効果が得られるまで2−3日ごとに増量する。(最大1800mg−2400mg/日)
6.ケタラール12.5mg×4回/日を内服するか、持続皮下注で50−120mg/日を投与開始し、漸増する。
7.キシロカインR100−150mg+生食100mlを点滴投与し、効果があればメキシチールRまたはタンボコールRを定期内服する。
☆神経因性疼痛による発作的な痛みには、2%キシロカイン100(〜200mg)+生食100mlの点滴、フェンタニル1−2アンプルの点滴静注、ロピオンの静注、モルヒネ+ケタラールの同時内服などを用いている。


V.ホスピス・緩和ケア病棟の役割
 死にいたる進行癌を患った人は、身体・心理・家族・社会・環境・宗教・生と死への考え方など、各方面でそれ以前にはなかった問題を生じ、生活が損なわれていく。
 ホスピスでは、患者と家族の生活状況を全体的にとらえたうえで、実現可能な患者・家族の希望を引き出し、その希望の実現のために障害となっている問題を一つ一つ解決していくか希望や問題を別の形に置き換えるとともに、患者や家族の人間関係にスタッフが入り込んで感情豊かな人間関係を再構築することによって、がんによって損なわれた生活全体を改善することをめざしている。

1.緩和ケア病棟では、入院日が手術日である。
1)医師・看護師・患者・家族の関係の構築(患者と家族の関係の再構築を含む)
2)患者にとっての疾患をめぐるストーリーの再構築
3)患者の身体的問題の把握とそのマネジメントの計画および開始
4)患者の希望の表出と、その実現可能性の評価、現実的にアレンジしての提案
5)家族の抱える問題の把握
2.病状悪化時の説明のポイント
・病状悪化時もまず本人の診察をして、本人・家族いっしょに状況が思わしくないことを説明する。そのあと、家族だけと面談する。


付録.六甲病院緩和ケア病棟への連絡
1.入院の問い合わせ: 電話078-856-2065 担当 橘 
(不在の場合は看護師・医師)
2.症状コントロールについての問い合わせ: fax 078-856-2066


  =質疑応答=
1)質疑:ホスピス医から:ガバペンですが、腎臓が悪い患者ではどのように使っていますか。また、その量は?
応答:ガバペンは腎機能が悪い患者では、少量から使います。通常200mg1×で、夜に投与し、しびれなど効果があれば、400mg、600mgと増量します。普通の方で1800mgまでぐらいは可能です。

2)質疑:看護師から:緩和ケア病棟はがんの患者さんだけですが、私は今、呼吸器の病棟にいます。呼吸器疾患の末期の方なども、かなりの苦しみがあり、今後、こんような癌以外の患者は、緩和ケア病棟で見れないのですか?
  応答:緩和ケア病棟はがんの患者さんしか見れませんが、がん以外で同じように苦しんでいる方は多くいます。六甲病院では、要請されれば、私たちが診察できます。

3)質疑:がん患者さんから;私は今、癌と戦っています。いずれ、ホスピスに入る予定ですが、ホスピスではこころのケアはしてくれますか。
  応答:六甲病院には心のケアをする専門のチャプレンがいます。入院すると、すぐに患者さんのところへ行き、話を聞いていただけます。
              (文責:山岡憲夫)